現代の高性能組込みシステムにおいては、耐熱要求は設計プロセスの初期に対処しなければなりません。熱シミュレーションは開発者に対して設計時間と再設計回数を減らす上での鍵を握るツールを提供します。さらに重要な点は、このツールを用いることで設計者が不良を予測して計画を立てられることであり、それにより設計リスクが減少し、基幹アプリケーションの信頼性が向上します。
熱シミュレーションと空気流設計
熱シミュレーションはアドバンテックの基幹を成す要素の一つです。アドバンテックは基準となる熱シミュレーションツールとして FLoTHERM を採用しました。FloTHERM は強力な 3D 計算流体力学ソフトウェアプログラムであり、電子機器内外の空気流と熱伝達ならびに伝導、対流、放射の複合効果を予測するために用いられます。FloTHERM を用いて電子機器の熱設計を評価することの利点は次の通りです。
- ハードウェアを製作する前に熱問題を解決
- 設計のリスピンの回数と製品単価の抑制
- 信頼性および全体の設計レベルを向上
実行可能性の検証
品質を長期的に保障し、試行錯誤回数を減らし、コストを抑えるため、アドバンテックは熱シミュレーション用に FloTHERM を採用しました。熱条件、システム動作、低ノイズ要求を正確にシミュレートすることで、システムの大きさと重量を正確に制御できます。FloTHERM は試作品の製作前に実行可能性の貴重な検証機会を提供し、最適化された部品の配置、冷却ファンとヒートシンクソリューションおよび熱伝導材料の設計、空気流と排気口の位置決めなどの手助けを行います。
新たなヒートシンク設計:ダイナミック熱伝導システム
熱伝導の鍵を握るヒートシンクは、通常ブロンズやアルミといった熱発散に優れた材質を用いて製作されます。ヒートシンクの多くはフィンの形状を持ち、表面積を最大にして熱伝導を加速させます。アドバンテックは、ダイナミック熱伝導システムと呼ばれる新たなヒートシンク設計を発明しました。このシステムは熱を持った部品からヒートスプレッダへの熱伝導を強化し、機械公差をより細かく調整することを可能にします。標準的な設計手法と比較して、このヒートシンクは CPU からの熱をより効率的に発散し、基板アセンブリ時の曲がりが発生する可能性を無くし、温度を約 11~ 25 °C 下げます。このダイナミック熱伝導システムはアドバンテックの製品、MIO-5271 と MIO-9290 に導入され、成功を収めています。システムの放熱を効果的に行うため、アドバンテックは引き続き業務用ヒートシンク設計の性能を改善していきます。