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港湾での石油荷揚げ作業における精密かつ効率的なスマートモニタリング(タイ)

2019/11/10

プロジェクト概要

オイルタンカーの荷揚げは、細心の注意を払いながら一歩一歩丁寧に行わなければなりません。一歩間違えれば、死傷者を出したり、地元の水域を著しく汚染する可能性があります。たとえ荷揚げ作業で事故を回避できたとしても、荷揚げされた石油の量の計算に誤りがあれば、費用と時間のかかる紛争の引き金になる可能性もあります。これらのリスクを最小限に抑えるため、多くの政府は石油パイプラインをリアルタイムで監視し、荷揚げ量の正確な計算を保証するため、SCADAグラフィックス制御システムをIoTインフラストラクチャに導入しております。

SCADAグラフィックス制御システムは、多様なデータを収集することで監視と計算を行いますが、これがなければシステムは意図した通りに機能しません。収集されたデータは、制御室のディスプレイにリアルタイムで表示され、エッジコンピューティングにより処理されます。これがないと、IoTフレームワークの最上位層のアプリケーションが、大量のデータストリームに対処する際に過負荷になってしまう可能性があります。

アドバンテックが開発したエッジ側でのデータ収集(DAQ)プラットフォーム:『ESRP-PCS-ADAM3600』は、IoTフレームワークの下位層からデータを収集し、エッジコンピューティングを実行し、上位層へのアプリケーションに接続することで、SCADAグラフィックス制御システムにサービスを提供するよう設計されています。このプラットフォーム『ESRP-PCS-ADAM3600』は、異なる種類のデータを取得し、意味のある情報へと生データを前処理し、それをアップロードするために柔軟でモジュール式に設計された入出力(I/O)インターフェースのレイアウトを使用しております。様々な通信プロトコルを介して上位層のアプリケーションへとシームレスに接続します。さらに、このプラットフォームは、SCADA開発者がプロジェクトを実現するのに役立ちますので、その結果、石油の荷降ろし作業工程中における事故や人為的ミスの低減にも役立てる事ができます。

プロジェクト要件

何千キロもの海岸線に囲まれたタイには、何百もの数の港が設置されております。石油資源を輸入に大きく依存しているタイの港では、頻繁にタンカーのドッキングや物資の積み下ろしなど、非常に賑わっています。タイ政府は多数の労働者を雇って石油の量を監視し、荷揚げ量を計算していますが、どちらのプロセスも人為的なミスが発生しがちです。しかし、タイ王国政府は最近、石油の荷揚げをリアルタイムで監視し、より正確な計算を行うため、新しい技術を採用することを決定しました。

このプロジェクトをタイ政府より請け負った某システムインテグレータの企業は、世界的に有名なSCADAシステムのプロバイダです。このプロジェクトで同社はSCADAプログラムを設計し、収集したデータを可視化するためアドバンテックのエッジソリューションを導入し、SCADAプログラムと統合させました。その後、陸上に配送された際に正確な石油量を計算、遠隔で石油の荷降ろしを監視、そして必要な時にいつでも石油パイプラインをオンまたはオフに切り替える仕組みを作りました。

このプロジェクトにおけるエッジソリューションには以下のような特徴がありました:
  • 港湾の過酷な環境条件にも耐えられるアウトドア用のDAQプラットフォームを収録
  • 異なるデバイスに接続できる十分なI/Oインターフェース
  • SCADAで使用するためデータを適切な形式に変換するDNP3の対応
  • 大量のデータを処理するよう設計された産業用コンピュータ

プロジェクト詳細

アドバンテックは、プロジェクト開発のために2つのエッジソリューションを提供しました。うち1つは、前述したビッグデータを収集し、オンサイトでデバイスを監視するエッジDAQプラットフォーム:『ESRP-PCS-ADAM3600』。もう1つは、請負業者である同システムインテグレータの企業によって設計されたSCADAプログラムを実行させる専用の高性能産業用コンピュータ:「ACP-4000」を組み合わせました。

エッジDAQプラットフォーム:『ESRP-PCS-ADAM3600』のユニットを数十台、タンカーと海岸を結ぶ桟橋の左右にある多くのパイプラインの前部、中部、後部にそれぞれ設置し、I/Oインターフェースを使用して、温度、水流、気象条件のデータを収集します。次に、このデータを前処理し、通信プロトコルを介して変換し、4Gワイヤレスネットワークを介して制御室のACP-4000にアップロードして可視化やその他の計算処理を行います。

制御室に設置した「ACP-4000」を介して、担当職員は石油の荷降ろしの監視、現地の天候を確認、エッジDAQプラットフォームに無線接続でコマンドを発行してパイプラインのバルブやポンプを開閉、タンカーからどれだけの石油が移動したかを正確に把握します。

ADAM-3600(リモートターミナルユニット)とWISE-PaaS/EdgeLink(プロトコル変換プログラム)で構成される『ESRP-PCS-ADAM3600』は、複雑なプログラミングやセットアップを必要とせず、地上のデバイスからデータを簡単に収集するエッジソリューションレディパッケージです。このエッジDAQプラットフォームは-40℃~70℃の温度範囲で機能し、複数のアナログ兼デジタルI/Oインターフェースを提供します。

また、I/O拡張用のスロットを4つ備えているため、現場で監視している機器を多く収容することができます。

エッジDAQプラットフォームは有線・無線ネットワークに両方とも対応しており、ポート周辺にネットワークケーブルを配置することが困難なため、本プロジェクトでは4G無線ネットワークでデータ送信を対応しました。本端末のSDメモリーカードとWISE-PaaS/EdgeLink(切断後もタイムスタンプを作成してデータを送信)を組み合わせることで、データの整合性も確保できます。これにより、たとえ無線ネットワークがダウンしても、油の見積もりに関する誤差または不正確さから解放されます。

エッジ DAQ プラットフォームには、プログラムを書かなくても生データを意味のある情報に変換できる便利な前処理機能があります。例えば、内蔵されている数式を使用して10mAを100℃に変換したり、温度と圧力データから水流を推定することもできます。さらに、Modbus、DNP3、およびIEC-60870-5-104プロトコルとの互換性がデータを適切な形式に変換してSCADAへアップロードできるため、プロジェクトの開発タイムラインのスピードを上げる事もできます。

システム構成図


まとめ

石油輸入業者、港湾作業員、タンカーオペレーターが、安全に石油を降ろしながら、降ろされた石油の量に関する正確なデータを取得することが非常に重要になります。この分野では、タイで実現できた今回のプロジェクトを通じて、IoTは人間の知性と技術の相乗効果を生み出すため大きく役立っております。

アドバンテックのエッジソリューションのおかげで、このプロジェクトはわずか数ヶ月で完了しました。モジュラーI/O設計、幅広い動作温度、複数の通信プロトコルとの互換性、有線および無線ネットワークとの接続を特徴とするエッジDAQプラットフォームとアドバンテックのテクニカルサポートがなければ、石油の荷降ろしと同時に正確な油量計算という両方のリアルタイム監視を実現させるため、依頼を請け負った当SCADA開発社側はより多くの労力と時間を要していたでしょう。今後もアドバンテックは、エネルギー分野の顧客のためIoTソリューションを共同で作成するよう緊密に協力していきます。