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【検証記事】アドバンテックのエッジインテリジェンスシステム 「EI-52」

2021/08/03

どのようなIoTシステムを構築される場合でも、少なくとも「センサーノード」「ゲートウェイ」「クラウドネットワーク」という3つの要素が必要です。ゲートウェイとは、センサーノードとクラウド間のデータを移行するシステムであり、データや命令系統を双方向に送信する役割を果たしています。ゲートウェイとクラウド間の距離の制限のためゲートウェイの機能は改善されてきており、部分的な処理ワークロードをクラウドと共有できるようになりました。 現在ではこれをエッジコンピューティング・リソースと見なすようになりました。

こうした中、異なるデバイス間の通信は、いわば「異なるIoTシステムのゲートウェイ」とも言い換えることができます。例えば、家電ではスマートスピーカーがゲートウェイの役割を果たしており、スピーカー内の各ノードはWi-Fi/Bluetoothを介しスピーカーへと接続され、音声データや命令コマンドを送信します。また、携帯電話基地局もゲートウェイとして機能しており、4G LTE/5Gを介して接続、データと命令コマンドを送信しています。

エッジコンピュータ EI-52

ゲートウェイは、産業用PCなどをはじめとするIoTアプリケーションにも使用されています。こうした産業向けのIoTソリューションには、ゲートウェイの導入事例が数多く存在し、単にRaspberry Piシングルボードコンピューターをゲートウェイとして用いる場合もあれば、フルサイズのサーバールームを使用する場合もあります。しかし、大半は、基本的な機能しか搭載されておらず、包括的なサポートソフトウェアやハードウェアが搭載されていません。

そこで、アドバンテックはエッジコンピュータ「EI-52」を開発しました。この記事では、EI-52を産業向けアプリケーションでのゲートウェイとして使用する際に重要なポイントと特長を説明いたします。

主な推奨アプリケーション

産業向けのPCは、通常のPCとは大きく異なり、高温ボイラーの近隣や来場者のホットスポットゾーンで衝突する可能性が高いエリアなどに設置される場合があります。したがって、厳しい環境下でも正常に動作するような「信頼性」を重視しなくてはなりません。 EI-52の設計は、過酷な環境向けに構築されているだけでなく、-10〜50°Cの温度で動作できるように設計された重工業グレードの堅牢性も備えています。EI-52の用途には、ショッピングモール・デパートなどの屋内設備、工場などの製造ライン、店舗やコンビニエンスストアのセルフサービスキオスク端末などのアプリケーションが推奨されます。

長期的なサービス&サポートが特長のWindows OSに対応

小売業界で最も広く使用されているサーバーは「タワーサーバー」ですが、このタワーサーバー内のOSに関して、現在Linuxが市場シェアを拡大してはいるものの、小売業界ではWindows OSがいまだに用いられています。これは、ストアマネージャーとスタッフがOSに精通しており、設定変更や基本的なトラブルシューティングを簡単に実行できるためです。EI-52は、Windows 10 Enterprise Long-Term Servicing Channel(LTSC)を使用しており、長期的なアフターサービスと製品保証をサポートしています。  

EI-52はWindows 10 Enterprise Long-Term Servicing Channel(LTSC)を使用しています。

Edge X Foundryと強力なテクノロジーエコシステム

Edge X Foundryとは、IoTエッジ環境でのデバイスとアプリケーション間の相互運用性を促進する、柔軟性と拡張性に優れたオープンソースソフトウェアフレームワークです。Edge X Foundryを実行するためには、ゲートウェイはDockerによるコンテナテクノロジーを利用する必要があります。また、2018年にEdge X FoundryのGo言語が大幅にアップグレードされ、セキュリティインフラストラクチャの強化、コンピューティングリソース要件が緩和されることになりました。さらに、ハイパーバイザー(VM、仮想マシン)の代わりにDockerでのコンテナテクノロジーを使用するようになりました。これにより、より軽量で他の用途や将来の拡張することができるよう、十分なハードウェアリソースを確保することができます。古いバージョンのEdge Xでは、重量やリソース要件などの問題から、最低でも519 MBのストレージを必要としましたが、現在では68MBで作動することができます。また、100ノードの動作をシミュレートする場合、古いバージョンでは1302 MBのRAMが必要でしたが、現在では27MBで作動することができます。さらに、ゲートウェイ上のプログラムを初期化する場合、各ゲートウェイで約35秒かかっていたものの、現在では1秒未満で初期化することが可能です。 EI-52にプリインストールされているソフトウェアを含めたストレージ容量の消費は、OS・Edge X Foundry・関連ソフトウェアプログラム含めて、わずか38GBです。

また、Edge X Foundryは、組込み通信プロトコルや複数センサーノード(カメラ・バーコードリーダーなど)のドライバー、サンプルコードなどを含め、様々なハードウェア・ソフトウェアベンダーにサポートされています。関連ドキュメントや過去の不具合、通信履歴も全て閲覧が可能です。 このように、Edge X Foundryは、産業アプリケーションでの開発を高速かつ簡単に行うことができます。

EdgeX Foundry Console dashboard

包括的なリモート管理機能を提供するバックエンド管理ソフトウェア「WISE-DeviceOn」

EI-52は、ノード管理にマイクロサービスを用いたEdge X Foundryを使用していますが、ゲートウェイそのものも管理が必要であるため、アドバンテックは「WISE-DeviceOn」と呼ばれるデバイス管理ソリューションを開発しました。

WISE-DeviceOnは主に2つのサービスから構成されています。 1つは管理対象のデバイス(今回の場合だとEI-52)にインストールされるWISE-Agent、そしてもう1つがアドバンテックによって構成・運用されているWISE-DeviceOnクラウドサービスです。WISE-Agentには、管理対象デバイス内のデータを収集しバックエンドに送信すると同時に、デバイスを制御するためのコマンドをクラウドから受信する役割があります。


バックエンドを介することでネットワークの接続ステータスや不具合など、多くのゲートウェイの状態をリアルタイムで確認できます。不具合が検出された場合、リモートで診断、また不具合を防ぐためデバイスデータをさらに分析できます。さらに、リモートで全ゲートウェイのファームウェア更新や、電源スイッチのリモート制御、通知条件を設定できます。また、WISE-DeviceOnは、複数のゲートウェイをグループ化しバッチ操作を実行することができるため、時間と労力を大幅に削減できます。

アドベンテック WISE-DeviceOn ダッシュボード

パブリック・クラウドをサポート

EI-52がセンサーなどのフィールドデバイスからデータを収集した後は、そのデータをクラウドにアップロードする必要があります。理論上、データ形式とプロトコルがクラウド規格に対応していれば、どのクラウドサービスでも使用することができますが、一般的にはMicrosoft Azureなどの有名なクラウドサービスを使用し、Azure IoT HubといったIoTアプリケーションサービスを使用しています。冒頭で述べたように、クラウドはIoT運用において必要不可欠な要素です。クラウドのデータ収集を通じて管理者は全てのフィールドデバイス上の変化を認識し、収集されたデータを分析することでパターンを検出・予測し施策を講じることができます。

EI-52 はMicrosoft Azure IoT Hubを使用しています

2つのオプション機能:推論アクセラレーションとバックアップ

EI-52は、AIの推論ワークロードをクラウドと共有するため、ローカルでAI推論を実行することができます。これにより、高速なCPU処理・省電力性を向上させ、データ送信コストを削減することができます。  

EI-52に搭載されている第11世代Intel® Core™ i5 / i3 / Celeronプロセッサは、AVX-512 VNNI命令セットをビルドインしており、これによりハードウェア回路を用いたINT8(近年のAI推論ベンチマーク)で推論を高速に行うことができます。また、EI-52にAIモジュール「VEGA-330」をオプションで追加することもできます。このモジュールは、mini-PCIeフォームファクタで、Intel® Movidius™ Myriad™ X VPUを2基搭載しており、ビデオストリームの推論が大幅に高速化されます。

また、EI-52には、こうしたAIモジュール以外にもクラウドやセンサーなどの通信要件を満たすため、5G/Wi-Fiモジュールを追加で搭載することも可能です。こうしたモジュールは安定した動作を保証するために、互換性・パフォーマンス・熱に対する耐久性など検証しています。一般的なゲートウェイは、センサーノードやクラウドネットワークよりも高い情報セキュリティ基準を必要とするため、多くの場合、厳密に監視されたシステムや沢山のレイヤーに保護されたデータセンターに配置されているのに対し、センサーノードを搭載したゲートウェイは、ほとんどの場合オープンな環境やパブリックスペースに配置されているため、完全に保護することは困難です。さらに、こうした装置はネット上だけでなく、物理的な方法を用いてハッキングされる可能性があります。センサーが攻撃を受けた場合、隣接するノードによってカバーすることができますが、ゲートウェイ本体が攻撃されてしまうと、その影響はエリア全体に広がる可能性があります。

そのため、ウイルス対策・データバックアップ&リカバリのソフトウェアをインストールする必要があります。 EI-52は、McAfeeのアンチウイルスソフトウェアとAcronisのデータバックアップ&リカバリソフトウェアを使用し、全ての保護・セキュリティ措置を施しています。 また、こうしたソフトウェアに加え、データの改ざんを回避するTPM 2.0セキュリティ機能ハードウェアチップ(Infineon SLB9670XQ2.0)が搭載されており、データを分散して保存するため、ハッカーがEI-52へアクセスしても検証キーがないとデバイス内のデータを正しくデコードすることができません。

Ei-52 ソリューションダイアグラム

本記事のまとめ

上述の通り、長期的に安定した信頼性の高い運用を行うゲートウェイには、堅牢な機械設計・優れたアフターサービス・強力なソフトウェア開発エコシステム・リモート診断/ファームウェア更新/バッチ操作・高速な推論・強固なデータセキュリティ保護を備えた「包括的なエッジインテリジェンスソリューション」が必要不可欠であると言うことができるでしょう。 EI-52は、上記の要件をすべてクリアしており、産業アプリケーションでプロアクティブな役割を果たすための理想的なゲートウェイです。